魅惑の温泉郷〜昭和を堪能、別府温泉“まるみや旅館”〜

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チェックイン時間にちょうど着きましたよ、なのに宿の玄関が開いていない。

ん〜?電話をしてみると、女将さんは買い物中‥

ご主人がお孫ちゃんのお迎えからもうすぐ戻るので、待っていてほしいと‥

そんな昭和まる出しの宿「まるみや旅館」。私はここ2年ほどで4回も泊まってしまいました。

こんなに別府温泉ってすごいんだ‥

改めて別府温泉の話、させて下さい。

別府温泉は超有名です。

温泉といえば大分は別府、大分は別府といえば温泉。

国内でもその名は轟いていることだと思います。

ただ、私は福岡出身ながら行ったことはありませんでした。

それこそ小さい頃から別府の“杉乃井ホテル”のCMなんかバンバン流れていたものです。けれど今の今までほぼほぼ縁がなかった。

ほんとにコロナ以降のここ数年ではじめて行きました。

夜の公園にライトアップされた「別府」の白い立体看板と、その横に立つ人物

有名な地獄めぐりもそうですが、平日にもかかわらずその観光客の多さ、さすがです。外国人も多い。

温泉地としての規模も大きく歴史も古いので、街並みや建物も格調があるというかレトロというかとにかく古めなんですよね。

もちろん温泉宿もたーっくさんあっておもしろいんです。

ちょっとAI様とともに別府温泉について説明させてください。

別府温泉は、なんといってもその湯量が1番の特徴。

源泉の数は2,000本!以上、もう多過ぎてよくわかりません。とにかく湧き出る湯量は日本一、泉質の種類も豊富でさまざまなお湯を味わえちゃう。

そんな中で面白いのが、別府市内には「別府八湯」と呼ばれる8つもの温泉エリアがあります。別府・浜脇・観海寺・堀田・明礬・鉄輪・柴石・亀川の8つ、それぞれに性格が異なる温泉区域となっているんだそうです。なるほど、別府温泉というひとくくりの温泉があるのではないんですね、あんな、けっして広くはない地域に違う温泉が8つもあるという‥はじめて知りましたよ‥

今回記事にする「亀川温泉」をはじめ、有名どころで言えば「鉄輪(かんなわ)温泉」、町のあちこちから白い湯けむりが立ちのぼりメディアなんかでよく見る“ザ・温泉街”の風景があるじゃないですか、あれです。

他にも「明礬(みょうばん)温泉」なんかは硫黄の香りと“湯の花”づくりというもので有名だそうです。

しかも、温泉に入るだけではない。

真っ青な海地獄や真っ赤な血の池地獄、勢いよく湯を噴き上げる龍巻地獄など、見て楽しむ「地獄めぐり」は別府といえばの観光スポットで超有名ですよね〜。

もち私も血の池地獄に行きました。赤く染まった温泉の池はとてもとても自然のものとは思えませんでした。もちろん、おそらく名物と思われる“血の池軟膏”を購入して、鬼と顔ハメ看板でハイポーズ!ですよ。人もわんさか多かった。

血の池地獄の鬼の顔はめパネル

他にも温かい砂に体をうずめる「砂湯」、温泉の蒸気で野菜や海鮮を蒸して食べる鉄輪の「地獄蒸し」、地元の人が普段使いする安い共同浴場などがあり、楽しみ方の幅が広い広い‥これが別府温泉の大きな特徴なんですね。

二度見っ!「¥6,000」って‥

そんな別府市には途方もなく多くの温泉宿がもちろんあるわけです。

そんな盛りだくさんの中で出会ったのが本題になる亀川温泉の「まるみや旅館」なんです。

どうやって知ったのかといえば、その宿泊料金にあります。グーグルマップで別府周辺の温泉宿を検索、すると宿泊料金も表示されるじゃないですか。

市街中心部にわんさと表示される宿泊料金の中、少し離れた場所に”¥6,000”という表示が煌々と輝いているわけですよ。

別府の中心から少し離れているとはいえ車で15分程度、もちろん温泉あります。そしてそして目を疑うのは2食付いてこのお値段というわけです。(ちなみに、これは初めて泊まった2024年7月当時の料金。現在は1人1泊2食付きで¥6,500です)

おまけに、安かろう悪かろうと思う勿れ、Googleの評価は☆4.6ときた。

どぉーです!

もちろん、わたしも齢50を超えた中高年男子です。

値段も値段ですし、多くを期待はしているわけではありません。

値段相応であればまぁいいんじゃない?とさほど期待せずして予約をしたわけ。

衝撃の「貸間」‥

話は少し逸れますが、そもそも別府温泉に「貸間(かしま)」と呼ばれる昔ながらの湯治宿が存在します。

もちろん全く知らなかったし泊まったこともない。

貸間は宿が部屋と温泉だけを貸してくれる宿泊スタイルで、宿の共同炊事場で自分で料理をします。

そこで名物である前述の「地獄蒸し」と呼ばれる温泉の蒸気を利用したかまど通称「地獄釜」です。近くの店で野菜や肉などを買ってきて、食材をその釜に入れてふたをしておくだけ。高温の蒸気で蒸し上がり、甘みが増しやわらかく仕上がるというなかなか味わえない別府温泉ならではの料理が楽しめちゃう。

部屋は和室中心、トイレや炊事場は共同という宿が多いものの、館内の温泉には好きな時間に何度でも入れる。

私、NHKの番組「72時間」で観て知ったこの「貸間」スタイル。非常に興味を持ったわけです。令和でも平成でもない、ただただ昭和なこの空間。

最近では1泊から泊まれる宿も増え、古い日本の面影が濃く残る建物、ほかの宿泊客との何気ない会話、湯けむりの中での自炊体験が「レトロで楽しい」と、若い人や一人旅の人にも人気が広がっているわけ。

この「まるみや旅館」も口コミや画像から「貸間」の雰囲気が漂ったわけですよ。貸間と温泉宿をたして2で割ったような、貸間の雰囲気を持った温泉宿、といったところでしょうか。実際、素泊まりで貸間のように利用することもできます。

実録!「まるみや旅館」

実際行ってまいりました。2024年7月のこと‥

「亀川温泉」という地域ではあるものの、住宅街というわけでもなし、なんか静かな温泉街なんですよ。かといって周囲にあまり温泉宿らしいものも見当たらない。ただね、入っていいのかどうかわからないような浴場があったり、民家の離れと思うんですが築古のコンクリート打ちっぱなしの小屋があって、ちょっと中を覗くと広めな浴場なわけ。たぶん今はどうか知らないけど、個人か共同でやっているような温泉場がちらほらあるんですね。さすが別府です。

そんな静かな一角に「まるみや旅館」はあります。

夜の路地にまるみや旅館の看板と窓の明かりが浮かぶ

冒頭の話の続きです。

最初に泊まった時でした。チェックイン時間ちょうどに来たわけ。玄関が開いてない‥。電話したら、女将さんが出て今買い物中で、もうすぐ主人がお孫ちゃんのお迎えから帰って来るので待ってて〜と言うんですね。

いいですね〜この生活感丸出しの昭和感ですよ。ここで時間にきちんと開いていないなんてどういうことなんだっ!と腹を立てるようではダメダメ、泊まる資格ありませんよ(笑)。

昭和がプンプンと‥

古い木造の旅館、お孫さんと汗だくのご主人に案内されて中に入ります。壁には数十年前と思われる地域の風景写真や子どもかお孫さんだか可愛らしい写真が飾ってある。もちろん古い人形や置物なんかも所狭しと飾ってあるんですねー。

もみじとかぼちゃで飾られた秋のハロウィンの飾り付け

板張りのギィギィ鳴る床に階段。宿泊部屋は畳6畳の年季の入った和室。もちろんトイレや冷蔵庫は共同。トイレは2階に4ヶ所、1階の浴場の隣に1ヶ所あります。廊下には古い棚というかタンス?があったりブラウン管のテレビが置いてあったり、昭和どころか大正まで戻りそうな佇まい。

ただし。

古いけれど、掃除はちゃんとされています。清潔にされているところが素晴らしい。

浴場も古い!

2つの浴場はいずれも貸切スタイル、大と小がありこちらもコンクリート打ちっぱ、お湯が熱い熱い、正真正銘の源泉かけ流しが嬉しい。水を足して温度調節をしてる間に身体を洗うという。空いていればいつでも入れます。

ここのお湯、私の身体に合うんです、刺激なしピリピリなし。効能がどうこう言うのも野暮に思えるほど優しいお湯で、玄人好み溢れた情緒が味わえます。しかも宿泊中、何回も。

青緑のタイルが貼られた昭和レトロな浴槽

女将さんの手料理って‥

お待ちかねの“まったりタイム”は、あっついお風呂でカッカした身体をクーラーで冷やし、テレビ(館内で数少ない令和モノ)をつけてちょっぴりチャンネル数の少ない大分の番組を楽しみます。(※クーラーは初回の頃こそ古いものでしたが、最近泊まった際には新しいものに買い替えられていました)

“まったりタイム”をまったりと過ごし、いよいよ食事です。

1階の畳敷の大広間に移動します。涼しい室内、宿泊者ごとにテーブルが分かれ、女将さんの手作り料理がならびます。一組に一つの保温ジャーには炊き立てご飯がてんこ盛り、ほぼご飯食べ放題状態。アルコールの持ち込みOK(常識の範囲内で)、ありがたいっ。

特筆は女将さんの手料理です。

懐石などとはほど遠い、マジな母の手料理と言っていい。これはもちろん悪い意味ではありません。誕生日の時の、父の給料日やボーナスの時の、といった特別な日に作られる渾身の母の手料理が、時を超えてそこに広がるのです。我々団塊ジュニア世代以上には悶え苦しむほどに嬉しい、懐かしいんですよ。

お造りがあって煮魚があって牛肉のうま煮、なすび炊いたやつ、ポテサラ、そしてメインがトンカツですよト・ン・カ・ツ。そんな厚切りだとか、○○ポーク使用のとか特別なトンカツではなくてあくまで家で出そうな千切りキャベツが添えられたふつうのトンカツです。温泉宿でトンカツはなかなかないでしょう。ワクワクが止まらない。

旅館の夕食の膳。とんかつ、あら煮、ポテトサラダ、刺身などが並ぶ

しかも、その料理の風景がたまらないんですよ、変に着飾った感じもなくて、なんか子どもに返ったんかなっていうくらい郷愁と歓喜ですよ。当たり前のメニューでありながら、スーパーの惣菜ともファミレスの味とも全く違う、優しい愛情を感じる料理をいただけます。

それから食後に本格的にゆっくり入浴。6畳一間に布団をセルフで敷いて熟眠ですよ。翌日も早速ひとっ風呂、朝食も女将さん特製の目玉焼きを中心とした日本の正しい朝ごはんを、一組に一つの保温ジャーの炊き立てメシでいただきます。最後に締めの風呂ですよ。

旅館の朝ごはんの膳。ハムエッグ、のり、明太子、納豆、おひたし

どうですか、この昭和を堪能できる温泉宿での1泊。帰り道は夫婦で「良かったねー」の連呼ですよ。

リピートも仕方なし‥

それからも計4回、「まるみや旅館」にお世話になり、飽きることなく温泉と料理に満足しています。

通ううちに、ふと思うようになりました。

20〜30年前とは言わず、ついこの間のコロナ前なら、こんな風情の温泉宿は別府にとどまらず、全国にまだまだあったんじゃないか。

そう思うと、もっともっと探して泊まっておけばよかった‥と惜しい気持ちになります。

仕方ないか‥。

でも、そんな中で今もひっそりと営業を続けてくれている宿がある。きしむ床、所狭しと並ぶ古い人形、母の手料理のような女将さんのごはん。豪華さはなくても、そこにしかない“しみじみな幸福”があります。

というのも、今の生活はやれSNSだYouTube、おまけに最近ではAIだAIだと大騒ぎで、最先端の物事についていかなくてはと必死、忙しいんですよ。ただ私もこの歳になって、さほど最先端が面白いわけではなくなってきたんですね。なにか無性にノスタルジーに満たされたくなってしょうがないんですよ。

だから私は、こんな温泉宿を見つけては容赦なく泊まりに行きたいと思います。こういう宿からいただく“しみじみな幸福”を、味わえるだけ味わっておきたい。

こんな宿が、まだ福岡の近くにあってよかったと思うのです。

宿を選ぶか客を選ぶか

正直、誰にでもすすめられる宿ではありません(笑)。

急な階段は高齢者にはきついでしょう。

トイレや洗面台が共同なので、苦手と敬遠される方もいることでしょう。

しかしです。

チェックインの時間に開いてなくても笑える人。きしむ床も、所狭しと並ぶ古い人形も廊下にあるブラウン管テレビも「味」と思える人。6畳一間の和室に郷愁を抱き感激できる人。そんな人には、1泊2食付きで¥6,500とは思えない時間が待っています。

派手さなんてどこにもありませんよ。帰り道、しみじみと幸福に浸りながら「また来たい」と思ってしまう。私にとって「まるみや旅館」は、そんな宿なんです。

昭和欠乏症の方、ぜひ。

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