炊き込みごはんの話、させて下さい。
福岡で炊き込みごはんといえば、俄然「かしわごはん」なんです。
「かしわ」って鶏肉のことですよ〜。
いくつかある炊き込みごはんの中の一つとして「かしわごはん」があるわけではありません。あくまで、炊き込みごはんのことを「かしわごはん」と呼んでいるんです。
福岡の「炊き込みごはん」は「かしわごはん」だっ!
スーパーに行ったら、炊き込みごはんのおにぎりって必ずあるでしょ。「炊き込みおにぎり」「五目おにぎり」、関西なら「かやくおにぎり」なんかも見たことがあります。
でも福岡では断然「かしわおにぎり」か「かしわにぎり」で決まってます。

私が小さい頃も、母がちょくちょくこの「かしわごはん」を作ってくれました。子どもの頃だったこともあって、今よりもとても嬉しかった記憶があります。
私のおふくろの味、ソウルフードの1つとも言えるんですよ。
そういえば、炊き込みごはんっていろんなバリエーションがありますよね。
今の季節(秋)だったら、きのこの炊き込みごはん、あんまり食べないけど栗ごはん、まず食べないけど松茸ごはん(笑)なんか。春なら筍ごはんや豆ごはんもそうかなぁ‥。
でも炊き込みごはんといえば、やっぱり鶏、あとはごぼうは欠かせない、にんじん、椎茸、油揚げ‥くらいでしょうか。全国的にその内容は大きくは変わらないですよね。
まあ、だいたいは“丸美屋”の「とり釜飯の素」で作りません?簡単でめちゃめちゃうまいという。私もお世話になっております。ちなみに丸美屋で作った釜飯も、テーブルに出すとき福岡では「かしわごはんよ!」です。
関西では、炊き込みごはんのことを「かやくごはん」とメニューに書いてあるうどん屋さんをちょいちょい見ました。他にも「五目ごはん」とか「あじごはん」とか、地域差があって面白いです。そして福岡では、断じて「かしわごはん」なんです。
ちなみに、関西にいた頃は“鳥貴族”の「とり釜めし」にもよくお世話になりました。小さいお釜が来て、炊き上がるのを待ってやっと食べられる、炊き立ての釜めしです。福岡に移住したら、そんな“鳥貴族”がほとんどなくて驚きました(今でこそ何店舗か進出していますが)。まあ、福岡には焼き鳥屋がわんさとあるから、あまり需要がなかったのかな‥。
うどん屋に、スーパーに、あふれる「かしわごはん」
福岡のかしわごはんといえば、まずうどん屋さんです。福岡は豚骨ラーメンに肩を並べるほどの、うどんのおいしい街。そしてそこには、店ごとにかしわごはんやかしわおにぎりが、マストと言えるほどメニューにあります。
全国的にうどんのお供といえば、いなり寿司やおむすびがメジャーですよね。福岡のうどん屋さんにもいなりも白おにぎり(かしわおにぎりと区別するため“白”おにぎりと呼んだりします)もばら寿司もあるんです。が…かしわおにぎりがおいしいばかりに、その存在は若干薄い。なんなら、かしわおにぎりに力を入れているぶん、いなり寿司は他地域より少し劣る?ような気さえします。
それだけ、かしわおにぎりへの熱の入れようがちょっとどころかかなり違うということでしょうか‥。
スーパーのお惣菜もそうです。
普通なら、炊き込みごはんのおにぎりは多くの惣菜に混じってさほど主張していませんが、福岡のかしわおにぎりは堂々と売られています。2個入り、3個入り、5個入りがあって、評判のスーパーなら8個入りやもっと多いところも。他に普通のおにぎり2個と唐揚げ・玉子焼きが入った“おにぎりパック”ってありますよね、そのかしわおにぎりバージョンもしっかり売られている。それくらいその存在感は大きい。郊外の道の駅でも、かしわおにぎりは安定の商品としてなかなか大きな顔をしています。
どのうどん屋でもスーパーでも、おいしいのに変わりはないけれど、微妙にその店その店の特色があるのがたまらないんです。
母の味がそれぞれ違うように、卵焼きやカレーが家ごとに微妙に違うように、かしわごはんも店ごとに違いがあって、それがイイ。
材料や調味料は同じはずなのに、使っている鶏肉や部位、切り方、地産の野菜や調味料と、詳しいことは分かりませんが、微妙に違うんですよ。

「かしわごはん」がおいしい理由
では、この“かしわおにぎり”は全国的な炊き込みごはんと何が違うのか。
まず「かしわ」は鶏、しかも“親鶏”です。出汁がおいしく出るぶん肉質は硬いので、具の鶏はあえて小さめに切られているように思います。鶏の油でコーティングされたお米は艶々で食感も良い、何より甘味がしっかり付いているように感じます。
そして“ごぼう”。土の香りと歯応えはさらにおいしさを高めます。ごぼうがあるのとないのとでは、かしわごはんのレベルが大きく変わります。あとはにんじん。油揚げは入っていないところも多いです。
そしてもう一つ大事なのが調味料である福岡の醤油っ!この甘い醤油のことは前回の記事でも書いたので、多くは語りません。
鶏の旨みと甘味、ごぼうの香りと食感、そして福岡の醤油の塩味と甘味。この三位一体の相乗効果こそが、かしわごはんがなぜこれほど福岡でメジャーなのかの答えだと思います。
衝撃のうまさ!福岡の“かしわごはん”4選
私が勝手においしかったかしわごはんを、食べた順に4つ挙げさせてもらいました。どのお店もとても有名なので、詳細は調べればすぐに分かります。
①牧のうどん
福岡を代表する「ふくおか3大うどんチェーン」の一つで、創業は1973年。50年を超える老舗で、福岡・佐賀・長崎で全18店舗を展開しています。
もちろんうどんあってのかしわごはんですが、そのうどんに並ぶくらいおいしい。やさしい出汁とやわらかい麺のうどんに、これまた優しいかしわごはん。さほど主張しない素朴な存在でありながら、頼まずにはいられません。一見あっさりした中に深いうま味と甘味があって、箸で持ち上げると、出汁とごぼうの匂いがふわぁ〜ときて止まらないんですよ。人気メニューなので、いつでもほっかほか。付け合わせのまん丸のたくあんが2切れ、大きいのも嬉しいんですよね〜。

②さわら めしくうや
ここは“かしわごはん”と言わず、“とりめし”と言っています(笑)。
ヤマザキショップってあるでしょ。ほんとに田舎の方の、小さな集落の片隅なんかに。すでに閉業されているところも見かけます。その“ヤマザキショップ 入部店”に併設された、完全テイクアウトのお弁当屋さんです。
とりめしと並ぶ看板商品は唐揚げ。併設の“炭火焼鳥 さわら街道”の焼き鳥(これも完全テイクアウト)もうまいんですが‥それはとりあえず置いといて、“とりめし”です。ここのとりめしは少し濃いめの仕上げ。醤油の風味がぷぅ〜んと来て、鶏の油をまとったお米の食感と艶、甘味が効いています。具の鶏も存在感があって、クセになるうまさです。

唐揚げ弁当の白ごはんを“とりめし”に変えられる「チェンジ」という嬉しい技もあります。ニンニク醤油風味のジューシーな揚げたて唐揚げと、鶏油が濃いめの醤油風味のとりめしがぶつかり合う、もう口の中はお祭り状態です。ただ、唐揚げは白めしで、とりめしは単品で食べたいと思うのは私だけではないはず。
③Aコープあさくら店
スーパーのお惣菜スタイルのかしわおにぎりです。その人気はハンパなく、年間120万個以上売れ、繁忙期には1日1万個を超えることもあるそう。1972年(昭和47年)の販売開始から50年以上、ほぼ変わらないレシピで作られている超超人気商品です。
もちろん実際に食べました。すでに上記2つを食べつけている上級者と自負していたので、タカをくくっていました。一口食べると、まだほんのり暖かく、ホロホロとほどけるふんわりしたおにぎり。優しい醤油風味の甘さと、鶏油の照りと甘さが印象的です。たまげました。上記2店に勝るとも劣らないうまさに。白い米粒も混じっていて、炊き込み型ではなく、炊いたご飯に別に煮た具を混ぜる混ぜご飯型のかしわごはんです。

平日の早めの来店では、さほど並ぶこともなく出来たてを食べられました。調子に乗って日曜の正午に行ったら、あまりの行列にとても買えずに帰宅したこともあります。
④東筑軒の“かしわめし”
北九州の折尾駅と直方駅を本拠地とする、100年以上の歴史を誇る有名駅弁です。
特徴は、鶏スープで炊いたご飯の上に、刻んだ鶏肉・錦糸卵・刻みのりをのせた、3色丼のような華やかな見た目。博多駅など福岡市内の中心部にも店舗があり、いつでも買えます。ただ私は、最近になって直方駅にある直営のうどん店がチェーン展開を始めたと知り、そのお店で初めて食べました。あっさりした鶏スープの味わいの上に甘さがあり、そのまた上の3色の具材が混じり合うおいしさ。意外にうますぎるうどんとめちゃくちゃ合うんですよ。うどんとセットで690円とリーズナブルなのも、おいしい要素の一つです。

これぞ福岡のごはん
こうして並べると、同じ“かしわごはん”でも、優しい牧、濃いめのさわら、ふんわりしたAコープ、鶏スープの東筑軒と、タイプも味もそれぞれ違います。どれが一番かなんて答えられない…というか意味がない。
なるほどねぇ〜。福岡の“かしわごはん”って、鶏好きの土地柄と甘い醤油文化が重なって生まれた、まぎれもない郷土料理なんです。
豚骨ラーメンやら辛子明太子のような看板名物の陰に隠れがちですが、うどん屋にもスーパーにも当たり前に並んでいる、福岡の暮らしにいちばん近いごはんです。
福岡に来たら、ぜひ一度かしわごはんを。

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