しょうゆの話、させてください。
福岡の醤油が”甘い”のって、みなさん知ってます?
特に地元の私たちって、このことを自覚していないような気がするんですよね。
「へぇ、そうかな?」くらいに‥。
しょうゆがおいしいだと?
さかのぼること20年ほど前のこと。
生まれも育ちも神戸っ子の妻が初めて福岡の実家を訪れたときのことです。母の手料理でもてなしました。刺身や馬刺しも出たことでしょう。
料理はどれもおいしく食べていましたが、中でも「醤油、すごくおいしい」としきりに感心しているのです。私は「うそやろ」「へぇ〜、そうなの」という程度。醤油なんてどこも同じだろ、と。
確かに、実家の醤油は母の友人経由で福岡の醤油業者から定期的に一升瓶をダースで買っていたもので、特別ではあったかもしれません。あまりにも妻が絶賛するのでペットボトルに入れて持って帰ろうとしたのですが、途中でバスの中に落としてしまった‥(笑)。
とにかく妻は福岡の醤油の甘さとおいしさに心底感動していました。
私や両親はいつもその醤油だったものだから、妻の言葉に特別ピンとくることはありませんでした。
それからもたまに思い出しては「あの醤油おいしかったなぁ」と偲ぶ妻。
しょうゆけんだった!
それから十数年、Uターンで福岡へ移住。
福岡や九州のおいしいものを再発見する日々のなか、やはり妻は醤油に注目します。
ちなみに実家はというと、いつのまにか全国メジャーなしょうゆメーカーの減塩しょうゆに変わっていて‥「何で?」とがっくりしていました。
実際のところ、福岡県には全国最多の醤油メーカーが集まっており、まさにラーメンや明太子にならぶ”しょうゆ県”といえます。
福岡や九州の醤油は甘くてうま味があり、まろやかで、塩辛さが控えめというのも特徴なんだとか。
なぜ九州の醤油は甘いのか。AI調べによると、南蛮貿易の時代にさかのぼるのだと。砂糖がいち早く九州に輸入されたことで、全国に先駆けて「甘味」が食文化に根づいており、温暖な気候も甘いものを好む傾向を後押しし、醤油にも自然と甘みが加えられるようになったといわれる。
製法は、熟成した醤油に甘味料をブレンドして仕上げるのが主流。こうして作られた甘口醤油は塩分が2〜3%控えめで、まろやかな口当たりが際立つのだと。
なるほど。

偉大なしょうゆ力。
ではでは、甘口醤油が活きる料理といえば。
まず外せないのが煮物の類。肉じゃが、煮魚、おでん、筑前煮(がめ煮)、きんぴらゴボウなどなど、甘味とうま味が調和した味付けをさりげなく出してくれます。「なんかちょっと違う」おいしさの正体が、これなんですよね。

刺身なんかどんな魚にも合いますが、わたし的には特にブリやアジなど青魚との相性が抜群と感じるんですよ。醤油が魚の身にまとわりつき、魚の脂に絡むことで甘みとコクが増し、生臭みもやわらぐという‥。
福岡の魚介がおいしいと言われるのは、玄界灘の恵みや料理人の腕だけではなく、この醤油の存在が大きいと私は密かに思うのです。
馬刺しや鳥刺しなんかは、こっちの甘口醤油じゃないと考えられないでしょう。
せっかくのおいしいおいしい馬刺し、鳥刺しのうまさ半減、どうしてくれるの!ってなほど。
まだまだあります。
かしわご飯とかしわおにぎり、豚骨ラーメンの”かえし”、うどん出汁、もつ鍋のスープ、水炊きのタレ‥挙げればきりがありません。博多のもつ鍋なんか、あの甘みの効いた独特のコクといったら甘口醤油あってこそなんですよね。
ちなみに妻のイチオシは「お餅」と「白ごはん」なんですと。素材の味をシンプルに堪能するからこそ、醤油の個性がストレートに伝わるのかもしれません。

やるねー!
しょうゆなくして福岡なし⁉︎
もちろん、福岡の食がおいしい理由を「醤油だけ」とは言いませんよ。そりゃ新鮮な魚介、ゴボ天うどん、豚骨ラーメン、もつ鍋、明太子、高菜漬け‥どれも福岡ならではの魅力です。
ただ、それらの料理を陰で支えているのが福岡の醤油だということは、ひしひしと感じます。素材の味を損なわず、料理全体を優しく包み込む。目立たずともその役割は計り知れないのが甘口醤油なのです。
まだピンとこない方は、ぜひちょっと意識して味わってみてください。きっと「これが福岡の味か」となんとなくでも気づく瞬間があるはずです。

‥ただし、冒頭でも言ったように地元住民はそれが日常だから全然気づいていないことが多いような気がします 私の体感的に‥。だから両親なんて福岡の醤油のうまさに気づくことなく、いつのまにか全国メーカーの減塩醤油に鞍替えしていたという始末(笑)なんですから(もちろん、メジャーな醤油も申し分ないと言わせて下さい)。

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